「本応寺大合戦之図」(令和5年10月26日更新)

今回は「本応寺大合戦之図」について調べてみようと思います。

本応寺大合戦之図

この絵は何かの戦いの場面のようです。中央の若い男、そして右側の中年の男が、欄干に片足をかけ、槍一本で迫りくる敵を防いでいます。
そして、描かれている人物が歌舞伎役者のようなポーズをとっています。
まるで、お芝居を見ているかのようです。二人の目の前には無数の敵の槍先が、見えます。人の数より多い槍が印象的です。そして縁側の赤色も際立っています。
まさに絶体絶命のこの場面、どこかで見たことがある気がします。そう「本能寺の変」みたいですね。
でも絵図の右上には「本応寺大合戦之図」とあります。歴史上でそんなのあったかな?
大きく描かれている二人の背後には織田家の家紋である木瓜の模様の幕が見えます。やっぱり「本能寺の変」ですね。
この作品が作られたのは江戸時代末期です。江戸時代は規制が厳しく、織田信長以後の歴史を描くことは原則禁止とされていました。
でも庶民の間では歴史への関心が強く、みんな興味があったようです。
様々な形でたくさんの歴史ものが描かれています。
色々調べてみて、やはりこの作品はかの有名な「本能寺の変」を題材にされたものだと推測しました。
登場人物の名前を見ても右側の中年の男が「太田平春永公(おおたひらはるながこう?と読むのでしょうか?)」・・・もしかして織田信長?
中央の「保利蘭丸(ほりらんまる)」・・・信長の側近だった森蘭丸かな?
左手の「安田宅兵衛(やすだたくべえ)」・・・最初に信長を突いたとされる安田作兵衛なのでしょうか?面白いですよね。少しひねって名前も書いてあります。法に引っかからないように、一工夫していますよね。見ていて、すごく楽しいです。ますますこの絵に興味がわいてきました。
本合戦浮世絵の作者「落合芳幾」(おちあいよしいく)(1833~1904) は、幕末から明治時代にかけて活動していた浮世絵師。江戸時代末期を代表する浮世絵師の一人である「歌川国芳」(うたがわくによし)は師匠に当たります。
浮世絵っていうと、思い浮かぶのは風俗を描いた版画です。他にも「新撰太閤記」等、たくさん種類があるんですね。この作品は、錦絵や武将絵と言われているらしいです。
当時の人たちはこうやって巧みに名前を変えたりして作品を世に出していたんでしょう。読み手側もきっと誰を描いているのか分かったうえで、読んでいたんだと思います。
そう思ったらますますこの絵が面白くなってきました。

では絵の詳しい中身です。
最初にこの絵を見て思ったのは、とても色彩が鮮やかだということです。そして次に目に付くのは多くの槍や弓矢。
右側の二人に対して向いているのですが、とても緊迫した瞬間が描かれていると思いました。あまり敵兵は目立たないけれど、槍や弓矢が多く描かれていることによって、とても緊迫した効果が出ている気がします。また襲撃している人々は甲冑装備をして草履も履いていますが、応戦している人たちは何も装備をつけていません。もちろん裸足。すごく細かい描写がされていますよね。まさに「本能寺の変」の不意の襲撃なのが良くわかります。両軍の武士たちはやはり歌舞伎の型のようなポーズでそれぞれ描かれています。一人ひとり違うのもとても面白いです。

この絵だけでは物足りなくて、同じ題材で描かれているものについても見てみました。
同じ題材で作られた別の作者の浮世絵と比べてみても違いが見えてきました。
 

足利義教公

「足利義教公」という作品。作者は歌川貞秀(うたがわ さだひで)(1807~1879)。題名が、「足利~」となっているので、なぜかな?と詳しく調べていくと、嘉吉の乱(1441)を描いていることになっているらしいのですが、実は「本能寺の変」を描いたものなのだとか。やはり歴史に対する規制はあったのでしょう。それでも描きたい、知りたいという人々の様子がこの2作品を見てとてもよくわかりますね。
絵について、よく見てみると右側の建物には織田家の木瓜紋の幕がかけられており、縁側の上では「信長」らしき人が弓矢を構えて抗戦している姿が描かれています。
「本応寺大合戦之図」とは違い、本能寺全体をとらえて描かれており、作者それぞれの描き方の違いがあって、とても面白いと思いました。「本能寺大合戦之図」に比べると「足利義教公」は人物は小さくてよく見ないとわからないくらいです。その代わり建物が詳細に描かれていて、全景が見渡せますよね。こうやって調べると色々と時代の背景などが分かって面白いですね。皆さんもやってみてくださいね。
 

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更新日:2023年10月26日