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大正から昭和の初期にかけて活躍した実業家・加賀正太郎氏は、天王山麓に土地を購入し自らの山荘を建てました。その後、大規模な増築が施され、1929年頃に今日の山荘の姿となりました。ところが、山荘が加賀氏の手を離れた後所有者は転々とし、1990年頃には山荘を取り壊してマンションを建設する計画が持ち上がりました。これに対し、地元住民を中心に保存運動が起こり、京都府、大山崎町の要請を受けたアサヒビール株式会社が天王山麓の景観を保全するために山荘を買い上げ、現在の美術館として蘇らせることで、山荘は今に保存されることとなりました。
美術館は、加賀氏の設計により建てられた「本館」と、日本を代表する建築家・安藤忠雄氏の設計により建てられた「新館」の2つの建物で構成されています。
本館には、河井寛次郎、濱田庄司などの陶芸作品が展示されていますが、その大半はアサヒビール初代社長・山本爲三郎氏が収集したもの。山本氏は実業家でありながら芸術や文化活動にも造詣が深く、中でも民藝運動を熱心に支援したことで知られています。民藝運動とは、無名の職人の手による雑器にこそ普遍の美が宿るとする、柳宗悦氏が提唱して起こった運動で、これに共鳴したのが河井寛次郎、濱田庄司といった工芸作家たちでした。 |
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また、本館2階にはテラスを利用したオープンカフェもあり、眼下に山荘の庭園や大山崎、八幡の眺望を楽しみながら、足を休ませることも出来ます。
本館と通路で結ばれた新館は「地中の宝石箱」とも呼ばれ、円柱形のギャラリーは半地下になっています。その地上部分には植栽が施されており、近代的な建築が周りの景観の中に見事に融合しています。自然採光に配慮されたギャラリーには、印象派の巨匠クロード・モネの「睡蓮」の連作のほか、イサム・ノグチ、ヘンリー・ムーアによる彫刻なども展示。本館とは異なる魅力を楽しむことができます。
また、加賀氏が石の配置にまでこだわって造ったと言われる緑豊かな庭園は、季節ごとに異なる表情を見せ、訪れる人々を楽しませてくれます。
雄大な自然と、人間の手による芸術が一体となった安らぎの空間で、ゆったりとした美術鑑賞の時間をお楽しみください。
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